2018年12月27日木曜日

181227 ありがとう

31年前、金沢市の片町を歩いていると「ゆべし」と書かれた看板が目に入った。迷わずビルの5階に上り、カウンターだけの小さな店に入った。運良く空席があり常連客らしき方々の間に腰掛けた。

カウンターの中央に「丸柚餅子」と書かれた黒い箱が置いてある。そして、初めての私に、名前も聞かず親しげに話しかけてくれる。そのうち、客の会話から今日が開店の日であることに気づく。客の話が弾むなか、「ありがとうございます」と言い出せず、感謝の意を込めて41番の名前でボトルを入れて帰った開店日だった。

その次に店を訪れたときに謝意をお伝えした。「開店日に一見さんが入ってきてボトルを入れて帰るなんて思っても見なかった」「何者かと考えた」の話で盛り上がる。しかし偶然は恐ろしい。県内と言えど時間と場所の組み合わせは無限に近い。開店の日に店の前を通りかかり、たくさんある片町の看板のなかで「ゆべし」が目に入った。

店のオーナーママは輪島市の山深い地域の出身で、常に笑っていて明るく素直な方だ。一人で店を切り盛りし、どんな客にも楽しく可笑しく、帰る客は「ありがとう」の言葉を残して帰る。ママの人となりに惚れ込んだ客ばかりだったと思う。

12月に入り手紙が届いた。「12月27日でお店を閉じる」とのこと。閉店を前に店に伺い昔話をした。そして、いつもより飲みすぎた。「長い間名前を使わせていただいてありがとね」と何度も繰り返す。「ゆべし、て単語は誰が使ってもいいんだけど、私の丸柚餅子を使ってくれて、こちらこそありがとうございました」と返す。

店では31年の間、全ての客に丸柚餅子を供してくれた。しかし、業務価格の提案にも応じてくれず「店員さんの顔を見たいから、店で買います」の一点張りだった。店員さんたちもママの人柄が好きになり店に通った。

帰りがけ「時間ができるだろうから、今度、輪島でゆっくり飲みましょう」と約束して店をあとにした。

「スタンドゆべし」のママさん、心から感謝しています。

ありがとう。



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